2019年10月11日

皆様こんにちは、鞄工房山本の晴之です。
本日お届けするのは「レザーマニアへの道」第3回。第2回を書いた9月12日から約1か月で第3回となりました。意外と早かった。
第1回から第2回の間は7か月以上も期間が空いていたというのに。

★過去のブログはこちらから
「レザーマニアへの道、初級編 ~タンニン鞣しとクローム鞣」

「レザーマニアへの道~鹿革とブライドルレザーを一枚革で見比べる~」

「鞣し」の第1回、「鹿とブライドル」の第2回に続いて、第3回は皆様にいろいろな皮革用語を知っていただこうと思います。
盛りだくさんの内容となっておりますので、その1とその2に分けました。今回はその1。
革屋さんが使う皮革の専門用語である「キップ」や「トラ」、「メガネ」って何だかわかりますか? 決して「切符」「虎」「眼鏡」ではございませんよ。

革の大きさ

第1回の冒頭でもありますが、まだ毛や皮脂が付いた状態である「原皮」を加工して、革製品をつくっていける「革」の状態にすることを
鞣し」と言います。そして鞣しを行うのはそれ専門の革屋さんのお仕事、鞣しをしてくれるところを「タンナー」さんと呼びます。

タンナーさんから革を仕入れる時は枚数ではなく、総面積で注文します。その際に使う単位が「デシ(ds)」。
平方デシメートルのことで、1デシは「10cm × 10cmの正方形」を表しています。
ところで私、「デシって英語で書いたら『deci』やのに、ローマ字で書く時は何で『ds』やねん」と思っていましたが、これは恥ずかしながら勘違いでした。
「ds」とは「square decimeter」の略だったんですね。合点。

1デシ

製品をつくる時も大体どれぐらいのデシの革が必要かを計算し、それを元に革を注文します。
例えば、30デシの革で1本の財布がつくれるとして、それを10本つくりたかったらタンナーさんに「300デシの革ちょうだい!」と言うわけですね。

鹿革と牛革の大きさ

では実際に革を見てみましょう。まずは鹿革。

革

鹿革は1枚で大体100デシ。右下の正方形が100枚入るぐらいです。
向かって左側から頭、肩、背中、一番右側がお尻にあたります。大の字になってうつ伏せになっている感じですね。
上下のシワシワなところはわき腹から脚にかけての部分です。

次に牛革。

革

おや? 前の鹿革と違い、下部がまっすぐスパーンと切れています。実はこれ、背中で真っ二つにされているのです。
仕入れた時点でこうなっているのですが、なぜかというと、単純に1頭分まるまるだと大きすぎるから。
この真っ二つサイズでも鹿革の2倍、200デシほどの大きさがあるのです。
この牛革のように一頭分の革を半分にしたものを「半裁」、先ほどの鹿革のように1頭分まるまるの状態を「丸革」と言います。

牛革の種類

ところで、ひとくくりに牛革と言ってもその中でさらに種類があるのです。
例えば「ステアハイド」。これは生後数カ月後に去勢され、2年以上育った雄の成牛の革を指します。
他に、「ブルハイド」は去勢されていない雄の成牛の革で、「カウハイド」は雌の成牛の革。
当店のランドセルに使っている牛革はカウハイドです。

それらに対して、生後6か月から2年までの中牛の革を「キップスキン」、生後6か月までの仔牛の革を「カーフスキン」と呼びます。
幼い牛の革の方がもちろん小さいのですが、傷が少なくきめ細やかなので革としては上質なんですよ。
ちなみに!キップとカーフを区別するのは日本特有らしく、海外ではいっしょくたに「カーフスキン」と扱われるのでご注意を!

革の部位

お肉にカルビやロースなど部位ごとの名前があるように、革にも部位ごとの名前があります。先ほどの鹿革を例にご説明しましょう!

革

お腹周りのベリー

わき腹から脚にかけてのお腹周りの部位を「ベリー」と言います。ご覧の通りシワシワダルダル。
他の部位に比べて繊維が荒く、柔らかい部分です。強度が他より劣りますし、見た目にもハリがないので、要となるパーツには適しません。
部位自体の面積も少ないため、小さいパーツなどに使われます。

首から肩、ショルダー

ショルダー」はその名のとおり、肩の部位です。首の部分も含んでこう呼ばれます。
ベリーよりは繊維が細かく使いやすいのですが、動物が生きていた時によく動いていた部分なので「トラ」と呼ばれるシワができやすくもあります。

革

おわかりですか? 虎の縞模様のように革の表面に色の濃い部分ができるのです。
スムースな表面を求めているときには嫌われがちな風合いですが、逆に自然由来の革である裏付けともとれるので、
このトラがついた革やアイテムを欲しがるレザーファンも少なくはありません。

一番張りのあるベンズ

背中からお尻にかけての「ベンズ」は、繊維もきめ細やかで厚みもあるため、もっとも有効に使われる部位です。
特に張りのあるお尻の部分は「バット」と呼ばれることもあります。
ランドセルで言えばカブセや肩ヒモや大マチなど、目につき、構造的にも丈夫さが必要であるところに使われます。

しかし、上述したように牛革は半裁で入ってくることがほとんど。丸革ならショルダーやベンズをもっと大きく有効に使えるのですが……もどかしい!

一度にバババッと聞き慣れない言葉が出てきたところで、その1はおしまいです。
次回のその2では1枚の革をもっとフォーカスして見ていきたいと思います!お楽しみに!

何よりも皆様、台風の被害に遭われませんように。週末は外に出ず、お気をつけて過ごしてくださいね。